アンソンから二日かけて隠れ家に戻りました。道中、とくに何事もなかったようです。や、これは船長だけが思っていたことなんですがw
さて、まずは草薙たちに隠れてこそこそと調べ物です。
●○○の詩篇は東部オーブラカに関する情報が豊富であるものの、ニジンスクの情報は参照できそうにありませんでした
残念。≪アンソンの遺物≫について調べたのものの、空振りに終わりました。てか、西部編があるのかね、もしかして? しょうがないな、と話し合い再開。草薙たちとあらためて作戦の打ち合わせです。その結果、施設内へは草薙と犬神の二人が侵入して目標物を奪取、その間ハンプティたちは脱出路を警護、草薙たちが戻ってきたら合流し、後はなんとかして船を出して逃げる…………。
いやいやいや、ちょっとまて。おまいたち、おいしいところもっていきまくり。てか、ニジンスクの人はどうするんだよ? 病の元が謎のまま持ち去られちゃったら、どうやって解毒剤をつくればいいのさ、ねえ?
「……貴方たち二人だけなら、出航する商船に容易く忍び込めるはずだ。毒婦(シエルの遺物のことね)をつれてニジンスクを出てください。我々は残って敵の目をひきつけます。船がキーリスカヤ(ニジンスク領)の圏外に出るまでなんとか時間を稼ぎましょう。そのかわり、病の正体を教えていただきたい。解毒剤とその生成方法、病の治療方法が解っているのならそれもお願いします」
ニジンスクの人々を助けるためにここにいるのに、草薙たちと一緒に逃げちゃ意味がありません。それにね、ここまで関わったら遺物の正体とか知りたいじゃないですか。主役の船長が活躍できなくてもいい、おいしいところをみな持っていくがいいさ。だからかわりに情報をよこせ、といってみました。
「断る」
はぁ!? なんですとぉ。
「滅び行く民族のことなど、実に些細なことだ」
この冷血漢!! 思わずテーブルに拳をたたきつけ、椅子から腰を浮かせるハンプティ。でかかったののしり言葉を飲み下し、殴りたいのを必死でこらえましたよ。殴りかかったら逆にやられていたと思いますけどw なんとか気持ちを落ち着けて交渉を続けました。
「ねえ、ヴァイスカウント。考えてみてください。正体そのものはともかく、病を癒す方法を教えたからといってどうなるっていうんですか。生き残ったニジンスク人たちがシエルの遺物と同じものを作り出すとでも? 治療方法や薬からある程度、病を推測し絞ることはできるかもしれませんが……ただ知っている、というだけでは駄目だ。作り出せるだけの技術と素材、それに環境が必要。それは錬金術師であるあなた方が一番よくわかっているはずですよ」
さらにみなの前で草薙に頭をふかぶかと下げました。お願いします、教えてください、と。
「断る!」
こ、こここここ、このやろう! 頭まで下げたのに……よくもかわいこちゃんズの目の前で恥をかかせてくれたな! ぶたさん泣いちゃうぞ~。
「我々の行動に一切の例外は存在しない。全ての知識は、正しき管理の下に。1つの例外が万の悲劇を生む。目の前の悲劇に嘆く暇があるのなら…次の悲劇を止める手立てに生命を働かせる。それが我々という存在だ。受け入れられぬと言うのならば、この協力は解消する」
そうかい、あ、そうかい。あんたは正しいよ。でも、当事者たちはそう思わないんだよ。滅亡寸前のニジンスク人たちは!
歯を食いしばって堪えました。ここで暴れてもなーんにもならないどころか怪我、悪くするとみなを巻き込んで死んでしまうだろうから。譲歩に譲歩を重ね、最低限のことを聞きだすことにしました。これが最後の交渉です。
「シエルの……遺物がなくなれば……病もなくなると考えていいのでしょうか。故意によるもので自然に広がりはしない、感染性は低い……と?」
(とっても長いので中略)
「お願いです、先ほどの問いに答えて下さい。もうそれ以上は望みません。答えを得たなら、あとは黙って指示に従いましょう。貴方たちを無事ニジンスクから送り出した後、我々だけで生き残った人々を助けます」
土下座までしませんでしたよ。逆に顔を上げ、正面から草薙の目を見据えて堂々と言ってやりました。これで「断る」っうならこちらから協力願い下げです(つづく)。
要約すると、草薙の作戦はこうでした。
STEP1) 入って
STEP2) 奪って
STEP3) 出る
あほか!! それ、作戦とちゃう!
「優秀な指揮官が居ない状態で警戒も緩ければ、侵入奪取程度の事はできる。……単純なことだ」
押し込みの好機がくるのを丘で待っていたのだとか。力技で押し切るつもりらしいですw; ズの直衛部隊がどっかいけばあとはザゴばかり。ザコなんて数がどれだけいても障害にはならんらしい。肝心の遺物持ち出しに関しては、「奴等は真理に遠い故、正しい利用法を知らず運び出すこともできない。我々にはそれが可能…それだけのこと」ですと。
とにかくこのままでは完全に蚊帳の外。収容所に突貫する前に一度小屋にもどって詩篇を調べて見たい、と思いました。シエルの遺物なら何か書かれているかもしれないし。「とりあえず一度仲間のところへ戻らせて欲しいんだけど……なんなら一緒についてくる?」とハンプティ。や、こんな砕けた調子で言ってませんがねw; てっきり、さっさと行って来い、と言われると思ってたのに草薙のお返事は……。
「…いま少し待つのも良い。では同行しよう」
ついて来るんかい(笑)。
「…(前略)病の正体について何か解っていることがあれば教えていただけないでしょうか?」
ぶたさんは問いました。小屋が狭く、なにかとプライベートな問題が発生するのでもっと広い場所に移りたい。だけど≪病≫が怖い……。草薙と犬神をつれて戻れば寝る場所にも困ります。それに小屋とアンソンは徒歩で二日の距離。ちょっと遠すぎます。街のすぐ傍とはいいませんが、中間ぐらいの廃村に隠れ家を移したいところです。そのためには病の原因を突き止め、廃村が安全であるかどうかの確認をしなければなりません。
「原因もまた、あの街の地下に眠っている。シエル人がニジンスク伯の手引きでかの知識を起動させ…その副産物として悪夢が撒き散らされた。ある種の意味においては毒に相違ない」
な、なんですと!? ニジンスク伯ですと!?
この惨劇、元をただせばタヌキ親父の野心が原因だった模様。シノイエフの悪巧みをどうにかして知ったズデーキンが「シエル兵器」の横取りを企んで侵攻、というのが真相のようです。こ、こいつら二人ともシバキ倒す!! どんな大義名分を振りかざそうと、オレは赦さん!! 苦しみの末に死んでいったン百万のニジンスク人たちに土下座しろ!! で、草薙に「一緒にズと兎をしばかないか?」って誘ってみました。
「過ぎたる知識を、正しき管理の下に。それだけ達成されれば、後のことなど知ったことではない」
あ、そう。冷たいのね。まあ、いいや。これで≪病≫の正体がはっきりしたわけだし、ここは悪夢の元を取り去ることが肝心。
「では、あそこから遺物を取り戻す何か具体的な計画があるのですか? 取り戻した後、どうやって港まで……国まで持ち帰るのです? ポケットの中に忍ばせることができるほど小さなものではありますまい。それならとうの昔にキーリスカヤへ持ち去られているはずだ。お宝を横からかっさらっていく賊を、占領軍がだまって見逃してくれるとは思えませんが?」
さあさあ、聞かせてもらおうではないですか草薙さん。貴方の計画を。(つづく)
(---瞳に怜悧な光を浮かべたまま---)
「…星々の記憶、大銀河の暗黒、真理の光。人の手に余る知識と、過去の悲劇を繰り返す遺物」
あれ? あんた、誰ってか、エルフェイユさん!?
いえいえ、会話の主はしっかり草薙でした。いきなり何いいだすねん。シエルの学者先生に憑依されたかと思ったじゃないか! お口ぽかーんのぶたさんを尻目に草薙は続けます。
「正しき知識は須らく、正しき管理者のもとへ導かれるべき。…真理の光から最も遠い類の男が手にして良いものではない」
あ、そう。やっぱ、そういうことなのねん。アンソン強制収容所の炭鉱奥深くに眠っているのは『シエルの化学兵器』のようです。てか、確定。草薙たちはそれを奪還しに来たのでした。もともとはニジンスク教会(のごく一部)がこの辺りの土地を封印し、ひそかに守っていたようです。それが……ニジンスクの地元教会は全滅、禁忌の地の封印を守る聖職者はもういません。
ぶたさんは悩みます。「シエルの超兵器はすべて廃棄」がぶたさんの信条だから。でもね、ここで草薙たちと戦って、なおかつその後でズの直衛部隊と戦って遺物を回収なんて無理。はっきりいって無理。それに、炭鉱の奥深くにあるというその遺物がどんなものなのか、まったく知識がありません。下手に弄って暴走させてしまったら? 大惨事です。
「(前略)だが、その知識、○○○○○に守り通せるか、といえばわたしは疑問に思う。現にこうしてほころびができているではありませんか。それでも、ズデーキンの手に渡すぐらいなら……」
葛藤の末、決断をくだしました。ここは草薙たちに一歩譲り、遺物を持ち帰ってもらうことに。草薙たちが持ち帰った後、どこに保管するか場所は知っているので、あとでまとめて他のものと一緒にポイするつもりです。絶対捨ててやるぅ。とりあえずズに渡らなければよい、と考えました。そのうえで二人に協力を申し出ました。奪還のために使える手は多いほうがいいだろうし、こちらも収容所解放を手伝って欲しいと思ったからです。
「いいだろう。こちらも無駄な戦力損耗は、望まない」
あっさり承諾。よい返事をもらえてぶたさん、一安心w
ここで真海たんを二人にきちんと紹介しました。真海たんと犬神とは知り合いのようですが、まあ、それはそれ。紹介が済んだところで話題をいま流行の≪病≫に切り替えました。そう、鈍いぶたさんはまだ気づいていなかったのです、≪病≫の正体に。(つづく)
アンソンの街を望む小高い丘
今にも雪の落ちてきそうな灰色の空と、降り積もった根雪によって固められた白い大地
黒い人影は、景色に溶け込むようにして其処にあった
そしてその傍には白い服に身を包んだ黒髪の女性が……って、うそだろ!? んも、ぎゃーって叫んでましたよ心の中で。新しい縁故ゲット、と勇んで出かけていったのに、いったのに~。丘の上から収容所の様子を観察していたのは草薙(敵)と犬神(敵)の二人...........orz
ああ、そうだった。この二人、たしかに錬金術師だった。でもなぁ、なんでこんなところにいるんだ!? キーリスカヤに雇われて、は神父の話からしてありえない。正義感に駆られてカリコフからやってきたようには思えない。ブローツォワから指示を受けて様子を探りにきた? いやいや、それも可能性薄。この二人が動く理由で一番ありえるのは……。
「…やはり、犬か」
真海たんがいきなり犬神にケンカを売りました。その一言で犬神が振り返えり、続いて草薙が振り……ばっちり視線が合ってしまいましたよ。うわー、もう逃げられねー。真海たん、犬神ともに臨戦態勢です。加えて草薙も殺気を放ってきます。こえー、こえー。真っ先に殺られる、ただの人が真っ先に殺される。ぶたさん大ピンチ。
ままままままま、まずは話し合いを。ということで、ハンプティから再会のご挨拶。
黒衣の男に目を据えたまま腕を横に出して真海を止めると、一歩踏み出して彼女と緋弥呼のあいだに体を割り込ませた。
「お久しぶりです、ヴァイスカウント。レディ緋弥呼。お二人ともまさかわたしをお忘れではないでしょうね? ここはコキュートスよりも暖かい。地獄の底での再会とはなりませんでしたが……」
返事を待つ間に雪がふり出しました。まあ、雪よりも二人の視線と態度のほうがずーっと冷たいんですけどね。それにしてもあいさつぐらいしろよ。「よう」とか、「おう」とか、「ふん」とかでもいいからさ。おも~い沈黙に耐えかねたハンプティは、気まずさを紛らわせるように顔を収容所のほうに向けました。
「あれを……収容所を二人だけで襲う気でしたら考え直したほうがいいでしょう。あそこにはズデーキンの直衛部隊が駐屯している可能性が高い。それとも貴方がたはキーリスカヤの意向を受けてここアンソンにいるのでしょうか?」
さて、草薙の返答はいかに!?(つづく)